2019年02月18日 公開

「1kg」の定義が変わる?これまでの定義・変更後の内容を解説

2019年、1kgの定義が130年ぶりに変更されます。何がどのように変更され、変更になることで私たちの暮らしにはどのような影響があるのでしょうか?そもそもなぜ重さの定義が必要なのかなど、私たちの身の回りの「重さ」に関する秘密にせまっていきます。

2019年、1kgの定義が130年ぶりに変更されます。何がどのように変更され、変更になることで私たちの暮らしにはどのような影響があるのでしょうか?そもそもなぜ重さの定義が必要なのかなど、私たちの身の回りの「重さ」に関する秘密にせまっていきます。

1kgの定義が変更になる!?

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1kgの定義が、2019年5月20日に変更になります。重さに限らず「cm」「円」などのさまざまな単位は、私たちの暮らしに欠かせない存在です。いつも当たり前のように使っているため、単位について深く考えたことがある方は少ないかもしれません。

しかし定義を決めるためには、「絶対に揺るがない基準」を見つける必要があります。その基準を見つけるのは、想像もできないほど大変な作業。今回1kgの定義を変更するのは、これまで「絶対に変わらない」と思っていた基準が揺らいでしまったためです。

どうして定義が必要なの?

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なぜ単位には定義が必要なのでしょうか?単位の定義の必要性がわかりやすいエピソードを、ひとつご紹介しましょう。

まだ国によって単位がバラバラだった時代のこと。とある国が、違う国の大工と一緒に木造船を作りました。完成したものを海に浮かべたところ、バラバラに壊れてしまったのだそう。これは単位が統一されていなかったため、各国で用意していた部品のサイズが違っていたことが原因です。

なお重さを定義するのは、単位のなかでもかなり大変。たとえば長さの定義は、「1m=真空中で光が1/299,792,458秒間に進む距離」と決められています。光の速さは不変で、かつ科学の進化により光の速さを正確に測れるようになったためです。

しかし重さには、絶対に変わらない基準というものがありませんでした。そこで世界共通の「1kg(原器)」というものを定め、常にそれと照らし合わせることで基準とすることにしたのです。

しかし最近、その原器に1億分の5kgの誤差が見つかりました。「たったそれだけ?」と感じるかもしれませんが、ハイテクノロジーや創薬などの分野では、このわずかな誤差が命取りになることもあります。そこで科学の進歩のため、より正確な単位の定義が必要とされました。

現在の1kgの定義は?

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現在の1kgの定義について、もう少し詳しくご紹介します。かつて1kgは「水1Lの質量」とされていました。しかし水は、温度で体積が変化してしまいます。そこでより安定した定義を作るべく、1889年に水1Lの重さと同じ重さの分銅が作られました。この分銅は、変化や磨耗の影響を受けにくい白金とイリジウムの合金製です。

これを1㎏の原器と定め、ほこりなどの影響を受けないようパリ郊外の国際度量衡局にて厳重に保管。さらに、この原器の複製を各国に配置するようにしました。

「先10万年は変化せず保つことができる」と考えられていた原器。しかし先ほども述べたように、最近になってわずかな変化が認められたのです。

どう変更されるの?生活に影響はある?

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これらの経緯から「重さに関しても、変化の少ない新たな定義を開発したほうがいいだろう」ということになりました。そして今回の変更には、日本が大きく貢献をしたとか。原器に代わる定義を作るには、変化しないと思われるものを見つける必要があります。この際、日本の測定技術がかなり役立ったようです。

1kgの定義は、これまでさまざまな案が検討されてきました。そしてついに2018年11月16日の国際度量衡総会にて、プランク定数の値により定義することを決定。プランク定数とは物理の世界における、エネルギーの最小単位と結びついた値です。

なお定義が変更になるからといって、私たちの生活が大きく変わるようなことはないでしょう。あくまでも、変更後は「1kgをより精密に測ることができる」というだけのこと。これまで家で使っていたはかりが使えなくなるなどの不便が生じることはありません。

単位の定義は科学の結集

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単位をより精密に定義することは、科学のさらなる進歩に貢献します。また単位を精密に定義するのにも、高度な技術が欠かせません。今回の定義変更も、現在の科学が結集しなければ成し遂げられなかったことでしょう。

普段の生活で何気なく使っているものの多くには、科学が深く関わっています。単位だけでなく、いろいろなものの成り立ちについて、お子さまと一緒に調べてみてはいかがでしょうか。科学の世界に関心を持つきっかけになるかもしれません。

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