夫に突然の辞令が下り、思いがけず「何が何だかよく分からない国」インドで暮らすことになった筆者。想像していた以上に日本では考えられないことが起きた毎日でしたが、そんなカオスなインドの英語教育事情について、ご紹介したいと思います。
パパ・ママ・お手伝いさん、みんな使う言葉が違う?
筆者が住んでいたのはインドの首都、デリーです。インドの中ではヒンディー語を話す人が多い地域でしたが、長女のお友だちには、パパと英語で話し、ママとはタミル語、お世話をしてくれるお手伝いさんとはヒンディー語、と見事に言葉を切り替えて話している子もいました。
日本では「日本語がちゃんと話せるようになる前に、外国語を教え過ぎるのは良くない」といった考え方もあるようですが、インドではすべての言語を生活の中でごちゃ混ぜにして使い、覚えていくのが当たり前のようでした。
本場の英語と違っても気にしない!インドの「ヒングリッシュ」
Rの発音が強いため「number」は「ナンバル」と聞こえ、thを「タ」と発音するので「thank you」は「タンキュー」です。語尾にやたらと「ナ」をつけるのは、ヒンディー語で「でしょ?」や「だよね」といった意味合いで使う「ナ」を英語のときもそのまま使っているからです。
ヒンディー語が混ざった英語は聞き取りにくく、「ごめんなさい、ヒンディー語が分からないから英語だけで話をしてもらえますか?」とお願いしたことも1度や2度ではありません。でも大抵は、「英語なら今話しているじゃない!君、英語が分からないの?」と返され、「僕らの話している英語はイギリス英語だから、アジア人の君には分からないんだね!」と得意気に言われたこともあります。
その自信たっぷりな態度にいくども目がテンになりましたが、「正しい文法で、正しい発音じゃなければ恥ずかしい」と黙ってしまう日本人に比べると、外国語の習得がはるかに早いように感じられました。「最終的に意図が伝わればそれでいい、必要なら使いながら覚えればいい」という精神には、学ぶ面もたくさんありました。
幼稚園児も英語でプレゼンテーション
長女はほとんど英語が話せない状態で入学したのですが、それでも先生は「Show&Tell」のときは長女をクラスメートの前に立たせ、「かわいいお人形ね!お名前は?」「このお洋服は何色?」など簡単に答えられそうな質問をして、長女の口で説明させるようにしていました。
自分が伝えたいことを、伝えたい相手の前で臆さずに話せるようになること。また同時に相手の話をしっかりと聞けること。英語を使えるようになるためには、言葉をただ覚えるだけでなく、大勢を相手にしても自分の意見を言える勇気や、傾聴する力も必要だということを知る良いきっかけになりました。
インドの英語教育から学んだこと
考えてみれば、言葉とは使う人々によって変化していくのが普通です。その国にローカライズされた英語だって、その国の中で一般的だというのなら、それもまた正しい言葉のひとつ。より国際化が進んでいく世界の中では、なまりもまたアイディンティティのひとつとして、受け入れられていくようになるのではないでしょうか。
「強気ごちゃ混ぜ」英語学習法を継続中
また私自身も、「日本育ちで英語が得意というわけでもない私が、英語の本の読み聞かせをするなんて逆に悪影響では」と思っていましたが、辞書を手に英語の絵本などを一緒に読むようになりました。
日常生活の中でも、あいさつを英語で言ってみたり、日用品を英語で言ってみたりして、子どもたちと遊ぶこともあります。気負いがなくなったことで、子どもの英語に触れる機会が格段に増えました。