2017年03月02日 公開

世界が注目するニュージーランドの幼児教育とは

ニュージーランドは幼児教育に力を入れる国。先住民や移民などさまざまな民族がいるこの国では、個々の文化を大切にしながらも共通した理念のもと教育を受けられる環境が求められてきました。ここで生まれた幼児教育は今、個性を伸ばす幼児教育として世界から注目されています。

ニュージーランドは幼児教育に力を入れる国。先住民や移民などさまざまな民族がいるこの国では、個々の文化を大切にしながらも共通した理念のもと教育を受けられる環境が求められてきました。ここで生まれた幼児教育は今、個性を伸ばす幼児教育として世界から注目されています。

現在の幼児教育はどのように生まれたのか

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かつてのニュージーランドの幼児教育は満3歳になると公立幼稚園に入るのが一般的でしたが、預かり時間の短さや言語・文化の違いにより公立幼稚園に通えず、他のサービスを受けることになる子どもと大きな格差が生じていました。1990年代になると、教育省が中心となり、どのような幼児教育の環境下においても同じような効果が得られることを目的とした教育指針が策定されました。そしてそれは現在に至るまで、ニュージーランドの幼児教育の根幹となっています。

ニュージーランドの幼児教育の種類と期間

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ニュージーランドの幼児教育には、主に以下のようなものがあります。

・プリスクール、デイケアセンターと呼ばれる私立保育園(0~4歳)
・キンダーガーデンと呼ばれる幼稚園(3・4歳)
・プレイセンターと呼ばれる保護者が自主運営するこども園(0~4歳)
・マオリ族の言語や文化を次世代に残すことを目的とした、コハンガ・レオと呼ばれる乳幼児教育サービス

そのほか、子どもたちが保護者同伴で参加する、歌やアクティビティ中心のプレイグループ(0~3歳)があります。こちらは週1~3回、2時間ほどの活動で、日本でいう子育てサークルのようなものです。

ニュージーランドでは5歳の誕生日の翌日に小学校に入学するため、幼児教育の期間は5歳の誕生日までということになります。

教育指針「テファリキ」が定めるもの

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ニュージーランドでは全ての幼児教育機関が「テファリキ」と呼ばれる教育指針を根幹としています。
テファリキは4つの原則5つの要素からなっていて、「何歳までに何ができるようになる」などの定めはなく、逆に「教えてはならない内容」などのしばりもないのが特徴です。
エンパワメント Empowerment
 幼児教育カリキュラムは、子どもに学び成長する力を与えるものである。
全体的発達 Holistic Development
 幼児教育カリキュラムは、子どもが学び成長している全体的なあり方を反映するものである。
家族とコミュニティ Family and Community
 家族やコミュニティといった、より広い世界が、幼児教育カリキュラムにとって不可欠である。
関係性 Relationship
 子どもたちは、人々、場所、物との双方向の関係性を通じて学ぶ。

心身の健康Well-being
 子どもの健康及び幸福感が守られ、育まれること 。
所属感 Belonging
 子どもたちやその家族が所属感を感じることができること。
貢献Contribution
 学習の機会が平等であり、そして子どもたち一人一人の貢献が価値あるものとして認められること。
コミュニケーション Communication
 自身の文化、他の文化の言語やシンボルが促され守られること。
探究 Exploration
 子どもは、環境の中で能動的な探究を通じて学ぶ。

幼児の活動評価は読み物「ラーニングストーリー」

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ニュージーランドの幼児教育では、通信簿のように「何はできなくて、何ができるようになった」というような評価はしません。子どもたちは幼児教育を終えるときに「ラーニングストーリー」と呼ばれる記録をもらうことがありますが、これは、保育者が子どもたちの成長を記録したもので、「興味のあること」「チャレンジしていること」など子どもの活動内容が記録されている読み物になっています。保育者は「ラーニングストーリー」を作る過程で、子どもの「学びの構え」を観察することになります。この「学びの構え」を文章にして本人や、他の保育者、家族と共有することが、子どもたちの自主性や意欲を育てる大きな鍵となっているようです。

「テファリキ」のもとで育つこどもたちとは?

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日本の幼児教育はその後の小学校生活が円滑に送れるようにと集団生活に重きが置かれる場合が多いですが、ニュージーランドではそもそも小学校の教育スタイルが日本と異なるため、必ずしも集団行動に慣れる必要がありません。そのため日本に比べて行動を制限されず、評価をつけられない環境のもと、子どもたちは「自分で考え行動する楽しさ」を学ぶことができるのです。これが、ニュージーランドの幼児教育が「個性を伸ばし、自主性を高め、意欲をもたせる」といわれる所以です。

ニュージーランドの幼児教育と日本の幼児教育の今後

ニュージーランドの幼児教育を代表する「テファリキ」は1996年に制定され、20年間取り組みが続けられていますが、現場の裁量が大きく明確な評価基準も用意していない内容は国際的にはいまだに先駆的といわれています。日本とニュージーランドでは社会的背景も違うため、ニュージーランド幼児教育をそのまま取り入れることは難しいでしょう。しかし、待機児童対策でさまざまな質の保育園が乱立する現状はテファリキが制定される前のニュージーランドに通じるところがあります。さらに多様な背景を持つ子どもに対応する包括的な取り組みつなげていく姿勢には国際化社会を迎えるにあたって参考にしたいところですね。

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この記事のライター