日本の夏至は、田植えや梅雨等に象徴されますが、海外にもいろいろな自然と社会環境があり、それぞれの伝統や文化があります。異文化・異民族にもさまざまな理由と事情があることを知れば、ひいては他者への思いやりや共感する力など、大切なものを養うこともできるでしょう。
夏の到来を祝う―北欧フィンランドの夏至祭
北欧の国々が夏至祭を大々的に祝うのも偶然ではないでしょう。雪と氷と極夜の長い冬に堪えて来た国、高緯度の国ならではのお祭り。
フィンランドの人々は酒を飲み、焚き火を燃やし、パーティを開きます。結婚式を挙げたり、前日から夏季休暇に入る人も多く、まさに解放の喜びに浸ります。
日本では夏至の次の小暑に当たる頃、鬱陶しい梅雨が明け、白雲に青空の真夏になることが多い時期です。
フィンランドの夏至は、気分的にはそれに近いのかも知れません。
天空に伸びる柱―スウェーデンの夏至祭
ポールの高さは二十メートル以上にも及び、ゆっくりと立てられる様は人々の豊作への祈りを表わすようです。新鮮な食材の少ない北欧では酢漬けなどの保存料理が発達しており、夏至祭にもニシンの酢漬けやチャイブ(西洋ネギ)を添えたサワークリームなど、多くの伝統料理が振る舞われます。
太陽への憧れ―東欧ロシアの夏至祭
夏至に行われるお祭りはイワン・クパーラ。これはヨハンの洗礼という意味のロシア語ですが、やはりキリスト教が入って来る以前の夏至祭に起源を持ちます。
光り輝く太陽が最も高く上がるこの日は、同時に秋と冬に向かう日でもあるのです。人々は自然の恵みとその偉大な力に頭を垂れ、豊作と健康・長寿を祈ります。
人々の夢と未来―リトアニアの夏至祭
また、夏至と男女の結びつき・結婚・子孫の繁栄などが結びついているのも同じで、乙女たちは夏至の早朝に朝露で洗顔し、また眠りにつきます。すると夢のなかで未来の夫に出会うことができる。朝露には不思議な力があると考えられているのです。
これを迷信と笑うのは簡単ですが、明日への希望もまた、人の生きる力になるものです。
荘厳な火祭―中欧オーストリアの夏至祭
イギリスやドイツなどでは五月祭が盛んですが、アルプスが国土の6割をしめるオーストリアでは、6月に夏至の火祭を行う地方があります。
夜の山頂で赤々と焚かれる火は幻想的で、北欧の明るい夏至祭とはまた違った趣です。
過去と未来を繋ぎ、希望を託する祭事
また古代オリンピックがそうであったように、人々が争いを止め、共に喜び合うという一面もあるでしょう。
いずれにせよ世界の国々や地域・民族のお祭りを見れば、そこに人々の過去と現在が現れ、なるほどと思う発見があるものです。