私立に比べて費用が安く、ハイレベルな授業を受けられる国立小学校。そのため人気も高いのですが、実は国立小学校は誰もが受けられるわけではありません。そんな気になる国立受験事情を都内の国立小学校6校を事例にご紹介します。連載vol.30です。
小学校の種類
公立小学校
採用する教科書などの教育内容は自治体によって異なります。
学費は無料。給食も提供されるため、費用面でのメリットも大きいです。
4年生以降からは中学受験を目指して塾に通う子どもが増えます。
私立小学校
授業料は学校によって異なりますが、初年度は入学金も含めて100万円以上は用意する必要があります。
国立小学校
特筆すべきは教育内容の質の高さです。日々の教育は研究対象として行われており、専門性の高い教師による新しい試みが常に行われています。教師は教科書の執筆にも多く関わっています。また、その授業内容は全国から教師が見学に来るほどです。子どもたちは公開授業として多くの教師たちに見られる機会を持つので、入学試験では自分の意見をきちんと伝えられるか、先生の指示を理解し行動できるかも評価しているように思います。
国立校での研究結果が文部科学省の制定する教育課程に活かされていくため、国内で最新の教育を受けられる場所と言っても過言ではないでしょう。
費用は無料ではありません。20~30万円ほどの費用が年間でかかります。
都内の国立小学校6校と注意すべき点
筑波大学附属小学校
附属の中高は共学です。中学・高校から非常に優秀な生徒が入学してくるため、小学校からの内部生も勉強をおろそかにできません。
1年生から6年生までの間にクラス替えは1回。強固な絆が生まれる小学校でもあります。
1次抽選で男女各1,000人に絞ったあと、2次のペーパー・運動試験に合格した男女各100名を対象に3次試験として抽選が行われます。男女各64名が合格となります。
詳しくはこちらの記事で詳細を紹介していますのでぜひご覧ください
慶應義塾幼稚舎と筑波大学付属小学校の試験内容「『お受験』はじめました!」vol.5 – Chiik! – 3分で読める知育マガジン –
お茶の水女子大学附属小学校
自分たちの考えを発信し他者の意見を聞くことを子どもたちに日々行わせており、受け身ではなく自ら学ぶ精神が鍛えられる他にはない特徴的な教育を行っています。
中学までは男女共学、高校は女子校となるため男子は中学受験をする児童も多いです。
お茶の水女子大学附属高校は女子校としての偏差値が日本一となるため、女子に大人気で倍率は60倍を超えるなど大変な難関となっています。
東京学芸大学の附属小学校4校
これらの小学校の最も特徴的な部分の一つが「教育実習校」としての側面です。
東京学芸大学が教員養成を主旨とした大学であることもあり、実習生を長期間迎え入れています。これには長所短所がそれぞれありますが、教育水準が下がるということはなく教師がしっかりとフォローをします。全体的にのびのびとした校風が魅力です。
また、このうち竹早・世田谷・小金井に関しては附属中学校はあるものの、高校は「東京学芸大学附属高校」の1校のみとなります。各附属校からは上位3割程度ずつしか進学できないので、多くの生徒は高校受験を強いられます。
大泉に関しては附属大泉中学校は閉校し、「東京学芸大学附属国際中等教育学校」という中高一貫校が設立されました。国立大学附属校唯一の国際バカロレア資格MYP校として認定されており、グローバル人材を育成するための新しい教育を行っています。
居住区によって受験資格を定めている国立小学校
最も広い範囲を設けているのは
・筑波大学附属小学校
・お茶の水女子大学附属小学校
・東京学芸大学附属竹早小学校
の3校です。それぞれ東京23区内に居住していることが条件となります。
筑波は加えて西東京市・埼玉県和光市の居住も受験資格として認められています。
以上3校は文京区の「茗荷谷駅」を最寄り駅としているため「茗荷谷3校」と呼ばれています。この3校は最も多い受験者が集まるため、抽選を2回行っています。
東京学芸大学附属世田谷小学校
指定居住区域が狭いので志願者が他校に比べて少なくなることから、1次は抽選がなく全員試験を受けることができます。そのため、しっかりと対策をしている人が多いです。
東京学芸大学附属小金井小学校
世田谷同様に1次抽選がなく、全員試験が受けられるので事前の準備をしっかりされているご家庭が多いです。
東京学芸大学附属大泉小学校
環境にいい場所に転居したつもりが、思わぬ落とし穴
吉祥寺がある武蔵野市で受験できるのは東京学芸大学付属小金井小学校のみです。国立小学校を受けさせたいと漠然と長い間考えていたようですが、調べることをせずに都内にいればどこでも受けられると思いこんでいたとのこと。小学校になるまで転居せずに、受験後に転居すればよかったと後悔していました。
国立は抽選に通れば受かる?
筑波の問題は短い時間で正確に問題を解いたり長いお話を聞く集中力と記憶力、そして体力も求められます。
お茶の水の問題はノンペーパーなので準備がいらないと思われがちですが、単にペーパーがないだけでしっかりと準備をしていないと太刀打ちできる内容ではありません。工作もありかなり長い時間の行動観察・口頭試問もあります。
竹早も自由遊びと言いつつも訓練している子とそうでない子の差はありますし、親の心構えも違います。実際合格している方の中でまったく準備をされていなかったという方は非常に少ないのではないかと思われます。
筑波は直前対策が可能?
が、1年以上かけてじっくりと鍛え、模試や先に行われた私立の受験で場馴れもしている子どもとの差は大きいです。
筑波は1次抽選は約2倍と非常に抽選に通りやすいです。そのかわり2次で厳選します。2次試験の倍率は10倍です。
筑波対策をしっかり行っている子どもは運動の課題で出される「くま歩き」も人間とは思えぬスピードで「くま走り」します。ここまでのレベルに到達するには、一朝一夕では難しいです。
ただ、ペーパーの範囲は図形とお話の記憶のみなので、子どもがこの分野に興味を示せば合格の道も開けるかもしれません。
国立小学校受験で注意する点
例外を決して作らないのが国立小学校です。とにかく早め早めの行動は欠かさないようにしましょう。
安い学費でハイレベルの教育が受けられる魅力がある反面、入学までにさまざまなハードルがあります。挑戦するなら各学校の通学範囲や注意事項など事前にしっかりチェックしましょう!
国立小学校受験TIPS
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次回もお楽しみに!