少子高齢化が進み兄弟・近所の子ども同士で遊ぶ機会が減っている現代社会。年下・年上の子とともに生活し、関わる「異年齢保育」を行う保育園・幼稚園も増えています。発達段階の違う子どもたちが交流する異年齢保育が、子どもたちの健やかな成長を促してくれるでしょう。
異年齢保育とは
核家族化・ひとりっ子の世帯も珍しくない現代、異年齢の子ども同士で遊ぶには、保護者・保育者が環境を整える必要があります。
今まで保育園・幼稚園・保育所では0歳児クラス・2歳児クラス・年少・年中など「同年齢」でのクラス分けが主流でした。近年、さまざまな年齢の子ども同士を一緒に生活させる「異年齢保育」を導入する施設が急増しています。
縦割り保育や混合保育とも呼ばれる
異年齢保育の形態はさまざまで、保育時間の長さ・方法は施設によって違います。
・日常活動の多くを年少・年中・年長一緒に行う幼稚園
・食事・おやつを0~6歳児全員一緒の場所で食べる保育園
・週に1回「全年齢一緒に遊ぶ」保育所
0歳~6歳までの子どもが通う保育園・保育所などでは年齢層が広いため、全年齢混合の活動は困難です。この場合、異年齢保育を発達段階に合わせてクラス分けする配慮が必要となります。
たとえば、2~3歳児クラス混合と4~6歳児クラス混合の2つの異年齢グループに設定する形などです。「お世話される、援助する」の異年齢交流が程よい距離感で行われます。
意味と狙い
自分がお兄さん・お姉さんの役割を担って、優しく言葉がけをしてお世話をすることもあれば、年上の子から注意される、助けられる場合もあることでしょう。
異年齢保育の魅力は発達度合いの違う子ども同士の交流を通して、多くのことを学べることです。赤ちゃんを含めた年下・年上の子と生活し遊ぶことで、社会性・共感力・忍耐力・コミュニケーション能力など、生きていくために必要な能力を伸ばします。
異年齢保育のメリット・デメリット
メリット
年下の子と関わる場合
・思いやりの心が育つ
・弱い立場の人に譲る習慣がつく
・相手の行動・言動を待つことで忍耐力がつく
・頼られることで自尊心・責任感が育つ
年上の子と関わる場合
・憧れの存在が身近にいることで、運動・学習・表現活動などすべてにおいて向上心が芽生える
・お兄さん・お姉さんに優しくしてもらうことで「自分も同じことを年下にしてあげたい」と思えるようになる
・年上の子が褒められ、叱られるのを見ることで道徳観念が育つ
デメリット
幼稚園を例にすると、3歳(年少)と5歳(年長)をペアにして活動する際は、それぞれの発達度合い・個性に配慮した取り組み方が必要です。
好奇心旺盛で色々なものに挑戦したい3歳児と、表現力・集中力が育ってきて、自分の世界を大切にしたい5歳児。一緒に作業を行うには、保育者による適切な区分け・役割分担が大切です。たとえば、貼り絵を行う場合なら、作業工程・貼る部分を分けることで衝突・混乱を避けられます。
異年齢保育での遊びの事例
お店屋さんごっこ
商品作り、店員さん、お客さんどの役割も全員経験できるように、交代制で遊びましょう。
誤飲を防ぐ大きさのおもちゃ・道具で使うことで乳幼児も参加できます。
まねっこダンス時々コチョコチョ
ダンスの途中で、お手本をしている人が「右コチョコチョ」と言ったら、右の人をくすぐり、「左コチョコチョ」と言ったら、左の人をくすぐります。
園の踊りやアンパンマン体操mミッキーマウス体操など、簡単にみんなが踊れるものがおすすめです。
ペアハンカチ落とし
次のようなルールをはじめに提示して、安全に楽しく行いましょう。
・無理に手を引っ張らない
・鬼になってもお互いを責めない
しっぽ鬼
鬼以外の人は、ハチマキ・紙テープなどをしっぽにしてたらします。鬼にしっぽをとられた人はエリア外に出ます。
以下の2つのルールを守りましょう。
・しっぽを押さえない
・体に触れない
絵本・紙芝居の読み聞かせ
また、静かに聞いている年上の子を見て「話の聞き方」を学ぶことができます。
それぞれの遊びを異年齢保育で行う意義
・自分より年下の子に合わせてゆっくり走る
・年下の子に分かりやすいように説明する
・年上の子の指示に従う
異年齢で遊ぶ意義の1つとして、「自分の立場をわきまえ、行動・言動を制御することを学べる」ことがあげられます。家庭・同年齢保育だけでは伸ばしづらい社会生活能力を、普段の遊びで無理なく向上できるのが異年齢保育の強みです。
家庭での声がけで異年齢交流をスムーズに
・自分より年下の兄弟が可愛がられるとかんしゃくを起こしてしまう
・年上の子にちょっかいを出して、叩かれてしまう
などはよくあるトラブルです。
相手の年齢に関わらず上手にコミュニケーションをとるには、自分に自信を持つことと相手を認める素直さ大切です。児童館、近所づきあいなどで普段から異年齢のお友だちと接する機会を設けることで、トラブルは減っていきます。
「○○ちゃん(年下)に優しく話しかけていて素敵だったね」
「△△ちゃん(年上)、鉄棒が上手だね。あなたも頑張りやさんだから練習したらできそうだね」
家庭内では子どもを認め自尊心を育てると同時に、他者を認めるような声がけを心がけましょう。