春の二十四節気、3番目は「啓蟄」です。冬眠していた動物たちが目を覚まし活動を始め、桃の花や沈丁花(じんちょうげ)が咲き子供と散歩をするのも楽しい季節。啓蟄の過ごし方や恒例行事、この時期に食べたい旬の食材で作る献立など、春を感じて気持ちがうきうきする啓蟄におすすめの情報を紹介します。
二十四節気(にじゅうしせっき)って何?
みなさんは二十四節気という言葉を聞いたことがありますか? 約半月ごとに一年を二十四等分、つまり季節ごとに六つに分けて美しい名前をつけたのが二十四節気(にじゅうしせっき)です。江戸時代まで使われていた旧暦では、暦(こよみ)と実際の季節にずれが出ました。そのため生活するのに不便になり、本来の季節を感じる目安として二十四節気を用いたのです。日本には春・夏・秋・冬の四季があるので二十四節気を知っていると季節の変化を敏感に感じられ、暮らしが楽しくなりますね。
二十四節気
春分や秋分は祝日となっており、夏至や冬至は季節の変わり目の大切な日です。このように二十四節気は日常生活に密着し季節を深く知ることができます。そのため多くの行事が二十四節気をもとに行われています。
雑節
二十四節気は中国から伝わった考え方ですが、節分や彼岸など「雑節(ざっせつ)」と呼ばれる、より日本の生活に根付いた考え方もあります。
七十二候
さらに二十四節気に関連して、七十二候(しちじゅうにこう)があります。二十四節気のひとつを「初候(しょこう)」・「次候(じこう)」・「末候(まっこう)」と三つに分け、季節の移ろいを表現したものです。花鳥風月を用いた具体的なことばなので、季節をより鮮明にイメージできますよ。
【解説】春の二十四節気「啓蟄(けいちつ)」ってどんな日?
啓蟄は春の二十四節気の3番目です。「啓」は開く、「蟄」は冬眠している虫を意味します。むかしはカエルやトカゲなど小さな動物はすべて虫と呼ばれていたことから、啓蟄は小さな動物の目覚めを意味します。
実際に動物が冬眠から目覚めるのは、最低気温が5℃を下回らず平均気温が10℃くらいの時期と言われています。冬ごもりから目覚めた生き物が一匹、二匹と明るい青空の下に顔を出し活動を始めるのがちょうど啓蟄の頃です。
またその年で最初の雷が鳴るのも啓蟄の頃で、これを「初雷(はつらい)」と言います。眠っていた虫たちがその雷鳴に驚いて目を覚ますことから、「虫出しの雷」とか「蟄雷(ちつらい)」という言葉もあります。
今年の啓蟄はいつ?2024年は3月5日から
それでは2024年の啓蟄はいつでしょうか?二十四節気の2番目「雨水」のあと4番目の「春分」まで、3月5日から3月19日が今年の啓蟄です。今年は立春が2月4日だったので、啓蟄も3月5日からとなり、19日までの15日間を指します。
暦にはずれが生じるため、二十四節気は毎年固定の日ではなくその年により前後します。暦のずれについては、毎年2月に国立天文台が翌年の暦要項を発表しているので参考にしてください。
国立天文台 天文情報センター 暦計算室
七十二候(しちじゅうにこう)で「啓蟄」の季節を知る
それではより季節を感じられる七十二候で、啓蟄の季節の移ろいを解説しましょう。
■初候 蟄虫戸を啓く(すごもりのむし/とを/ひらく)
冬にじっとしていた虫たちが動きはじめるという意味です。戸を啓くとは、土のとびらを虫たちが「よいしょ」とおし開ける様子を表しています。
七十二候・第七候(3月5日~9日頃)
■次候 桃始めて笑う(もも/はじめて/わらう)
桃の花が咲きはじめるという意味です。花が咲くことを笑うと表現しています。この時期は桃が豊かに「笑う」ころで、この時期の雪解けの水は桃花水(とうかすい)とも呼ばれます。
七十二候・第八候(3月10日~14日頃)
■末候 菜虫蝶と化す(なむし/ちょうと/かす)
青虫が蝶になるという意味です。菜虫とは、キャベツや大根の葉につく青虫のことで、成虫になるとモンシロチョウになります。
七十二候・第九候(3月15日~20日頃)
いかがですか?虫や花が活動を始める様子や桃色や緑色が鮮明にイメージでき、いよいよ春!という楽しい気分になりますね。
【豆知識】文学からみた二十四節気「啓蟄」
二十四節気は季語として俳句や短歌、時候の挨拶としても使われています。「啓蟄」や「虫出しの雷」も春の代表的な季語です。この季節をわかりやすく表現した一句を紹介します。
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
啓蟄の 蟻が早引く 地虫かな
最近では手紙を書く機会が減りましたが、3月は卒業、別れの季節です。子どもがお世話になった先生に、時候の挨拶「啓蟄の候」を用いて感謝の手紙を書くのも素敵だと思います。
旬な食べ物・花や鳥
啓蟄になるといよいよ自然界も華やかになってきます。だんだんと暖かくなり花が咲き、旬を迎える食べ物がたくさん出てきますね。例えば「山にある宝物」とも言われる山菜がたくさんが顔をのぞかせます。昔から「春には苦みをとれ」というように、旬の山菜の苦味には、抗酸化作用のあるポリフェノールや新陳代謝を促す成分も多く含まれているそうです。紫外線が強くなってくるこの季節、公園遊びに付き合うママパパには旬の山菜がおすすめです。
また、春の魚と書く「鰆(さわら)」や晩春の季語にもなっている「ホタルイカ」が産卵を始めるのも啓蟄の頃です。新しい命がたくさん増えるこの時期、なんだか気持ちも明るくなりますね。
食べ物
魚:さより・あおりいか・キンメダイ・あさり・さわら
昆虫・生きもの
ミツバチ・ハナアブ・ヘビ(アオダイショウ)・トカゲ・カエル(アマガエル)・コアオハナムグリ
鳥・花
花:すみれ・桃・芝桜・沈丁花(じんちょうげ)
沈丁花の香りに誘われてお散歩をすれば、道端で春の草花や虫たちに出会え、自然を身近に感じられます。
啓蟄の時期の過ごし方
それでは小さな動物が活動を始める啓蟄の時期におすすめの過ごし方をご紹介します。
・雛人形をしまう
雨水に飾ったおひなさまは、啓蟄に片付けると縁起がいいとされています。しまうのが遅いとお嫁に行くのが遅くなるとの言い伝えもありますが、あまり気にせず片付けるきっかけとして啓蟄の日を選ぶのもよいですね。
・ヨモギやつくしを探す
ヨモギは都会の空き地や道端にもよく生えている野草です。これを摘んで持ち帰り、お餅に混ぜればよもぎ餅ができます。つくしも日当たりのいい土手や野原に生えています。わが家も昔、おばあちゃんが摘んだつくしをつくだににしてくれた思い出があります。都会でも探せば見つかるヨモギやつくしを探してみませんか?
啓蟄にゆかりのある行事「菰(こも)はずし」
江戸時代から伝わる冬の風物詩「菰(こも)巻き」をご存知ですか? 大名庭園で松の木を害虫から守るために藁でできた「菰」を幹に巻く行事です。この巻いた菰を外すのが啓蟄の頃で「菰はずし」と呼ばれ、春の恒例行事になっています。虫が動き出す啓蟄の頃に取り外すことで、中に入っていた害虫を駆除できます。
都内でも戸越公園や浜離宮恩賜庭園など各地で、立冬の頃に菰巻きを行い、啓蟄の頃に菰はずしをするそうです。まさに二十四節気にならった行事ですね。
子どもと楽しむ啓蟄
二十四節気はその季節がどんな時期かという目安です。せっかく四季のある日本で暮らしているからこそ、それにちなんだ知育や子育てにつながる取り組みをおうちでも行ないたいですよね。啓蟄といえばやっぱり春の虫。ここでは昆虫好きな子どもも楽しめるような啓蟄にちなんだ、食べる、作る、体験するアイディアを紹介します。
啓蟄に旬の食べ物でつくろう、食べよう!
昔から旬のものを食べると健康に暮らせるといわれています。啓蟄の時におすすめの、旬の食材を使った献立はいかがでしょうか。
啓蟄の献立
白玉よもぎもち
今回は子どもと作れる「白玉よもぎもち」の作り方を紹介します。
摘んできたよもぎで作れますが、製菓材料を扱う店ではよもぎパウダーがあるので利用すると便利です。こねる作業は小さな子どもと一緒にできますよ。いちごをつぶして混ぜればピンクの白玉もできるので、3色団子にしても可愛いですね。
「白玉よもぎもち」
・白玉粉 100g
・生よもぎ (適量)
・水 (よもぎペーストの水分量を見ながら調整)
・粒あん、きなこ、黒蜜などお好みで
<作り方>
1)よもぎはよく水洗いをして、熱湯でゆでる。水気をよく絞る。
2)1)を細かく刻んだり、すりつぶし、裏ごしをする。もしくはフードプロセッサーでペースト状にする。
・茎などは取り除くと舌触りがよいです。
3)白玉粉によもぎペーストを加える。様子を見ながら水を加えて耳たぶくらいのやわらかさになるよう調整する。
・よもぎペーストの水分+水が白玉と同量が目安
3)しっかりと混ぜてこねたら、好みの形に丸める。
・丸くして真ん中を少しくぼませると火の通りがいいですが、団子状にしてもかわいいです。
4)沸騰したお湯に白玉団子を落とし入れる。
5)浮いてきたらできあがり。すくって水にとる。
6)あんこを添えても、きな粉をまぶしても、黒蜜をかけてもおいしいです!
よもぎは和製ハーブとして知られ、貧血予防や冷えにも効くそうです。まだ寒さが残るこの時期にはありがたい食材です。
ペーパークラフトで作ってみよう!
啓蟄の末候の頃になると「菜種梅雨(なたねづゆ)」と呼ばれる春の長雨が降ります。そんな日に家でできるぺーパークラフトを紹介します。小さな虫が活動しはじめる啓蟄におすすめなのは「ナナホシテントウ」と「アゲハ」で、難しそうに見えますが大人なら3時間程度でできます!春休みもあるので、おうち時間に取り入れてみてください♪
ペーパークラフト(ナナホシテントウ) – Canon Creative Park
ペーパークラフト(アゲハ) – Canon Creative Park
季節を感じにおでかけをしよう!
暖かくなってきたら人間だっておでかけしたくてうずうずします。春の花が咲く公園に行ったり、見つけた虫を図鑑で調べたり、近所の公園で春の虫探しをしても楽しそう。つくしや山菜とりもいいですね!
・桃の花が有名な公園
桃の花が美しい公園や名所は全国にあります。「大阪城公園」には桃園があり、早咲きの矢口(やぐち)や寒緋桃(かんひとう)、関白(かんぱく)は、3月中旬ころに花を咲かせます。桃の名産地である山梨県にはたくさんの桃の名所がありますし、福岡県には約45種類以上の桃の花が咲く「千本花桃園」もおすすめです。
・虫の図鑑
春になると昆虫好きな子どもたちが、ボロボロになった図鑑と虫眼鏡を持って観察する姿を見かけます。最近ではスマホのアプリでも昆虫の名前がわかるものもあるので、子どもと一緒に昆虫博士を目指してみませんか?
・つくしがとれる場所
よちよち歩きの子どもでも楽しめる、つくし探しもよいですね。たくさん摘めたら、お料理にしていただきましょう。
【まとめ】春の二十四節気「啓蟄」は春の活動が始まる頃
いかがでしたか?啓蟄が少し身近に感じられたかと思います。まだ寒い日もありますが、春の兆しが見えてくるうれしい季節。もし二十四節気に興味を持てたら、こんなかわいい本もありますよ。
「啓蟄」と紙に大きく書いて貼ってみてはいかがでしょうか。難しい漢字と節気が覚えられ、一石二鳥です。
啓蟄の次の節気は「春分」です。昼と夜の時間が半分ずつになる暦の上でも大切な日です。春分までの期間、おすすめの啓蟄の過ごし方を参考に楽しい春休みをお過ごしください!
【春の二十四節気】「春分(しゅんぶん)」は昼と夜が同じ長さになる頃