インド式の算数や、IT業界で活躍するインド人が日本のメディアで取り上げられることが増えたためか、インドに住んでいたというと、「インド人って頭が良いんでしょう?」と聞かれることがあります。「インド人は頭が良い」といわれる理由を、筆者の実体験を踏まえて考えてみました。
インド人の英語力
実際、筆者の住んでいた首都デリーでは、大型のショッピングセンターやカフェなどでは、英語を話せる店員さんがたくさんいました。ローカルマーケットでも、若い店員さんは簡単な英単語を羅列して、英語で対応してくれることもありました。
英語を話せるインド人が多い理由のひとつとして、インドの熱心な英語教育が挙げられます。地域や学校にもよりますが、公立小学校でも毎日英語の授業がある学校は珍しくなく、私立小学校であれば授業は全て英語というところも多かったです。
また、インドの大学では授業が全て英語で行われること、都会では英語が話せないと良い仕事につけないことなどから、英語スキルに対する切迫感も日本より強いと感じました。
そして何より、インド人は少々の間違いやなまりに臆さず、堂々と英語でまくしたてます。「とにかく話してみる」という姿勢が、英語習得を早めているのではないでしょうか。
小さなころからの教育と、英語の必要性の高さ、そして英語に対する積極性が、インド人の英語力を底上げしているのかもしれません。
インド人の算数の力
実際はどうだったかというと、日常生活で「インド人って計算が早い!」と感じるような出来事はほとんどなく、むしろおつりを間違えられたり(わざと少なく渡されることもあるので何ともいえませんが)、合計金額が違っていたりと、どちらかというと残念な記憶の方が多いほどです。
一方で、特に子どもを持つ親や学生さんは、理数系科目に対する関心がとても高いように感じました。
インドには理系に強い大学が複数あります。最高峰といわれるインド工科大学に進めば、国際的な企業から高額な給料で就職をオファーされることも少なくないそうです。
そういった理由もあり、算数やプログラミングといった理系の教育はとても盛んです。インドの進学校に通う子どもがいる友人に聞いたところ、「幼稚園の年長児のときに足し算と引き算を教わり、小学1年生になったら二桁の計算がはじまる。小学校では毎年理解力テストがあり、合格しないと上の学年に上がれない」という話も聞きました。
世界で活躍しているインド人の中には、医師や技術者など理系の専門職についている方が多く、インド国内でもあこがれの的です。「理系科目に強ければ良い職につける」という意識が強いため、親子共に学習へのモチベーションが高いのだと思います。
インド人の議論する力
インドの国土は日本のおよそ9倍、人口は中国に次いで世界で2番目に多く、13億人を超えています。「インド人」とひとくくりにできないほど、インドは広く、住んでいる人々も多様性に満ちています。
自分の意見や文化をアピールするために、また多様性を理解するためにも、活発な議論は欠かせないのだと思います。
多様性に富んだ社会で生き抜くために鍛えられた、自己主張する力、相手を説得する力が、世界で活躍する原動力にもつながっているのかもしれません。
インド人の「成功したい」というマインドの強さ
貧困から脱出するためには、稼ぐことのできる仕事につく必要がありますが、若者の多いインドは労働力にあふれています。厳しい競争を勝ち抜くには、勉学に励み技術を身につける他ないのです。
筆者の家でドライバーを勤めていてくれた男性は、「僕は自分が稼いだお金で息子を大学にまでやった。それが自慢だ」とよく言っていました。息子さんにもお会いしたことがありますが、「大学でしっかり学び、良い仕事について親に楽な暮らしをさせてあげたい」と話していました。
「貧困から抜け出したい」「豊かな生活をしたい」という強い気持ちが、インド人の勉強への熱意を高めているように感じます。そしてその熱意が、優秀な技術者や研究者を数多く輩出することにもつながっているのではないでしょうか。
インドの教育から学んだこと
インドの教育熱心な姿勢には、筆者も学ぶところがたくさんありました。英語の必要性を感じられる機会をなるべく設けたり、議論を恐れず自分の意見を言えるようサポートしたりするなど、日本でもできそうなことは取り入れていきたいと考えています。