日本人の読書離れが叫ばれてから久しいですが、さらに輪をかけて読書をしないメキシコ人。国民の半分が本を1年に1冊も読まないとか!? 読書習慣があまりない国で、子どもに本を読ませるためにはどうしたらいいのでしょうか。メキシコの現状をお伝えしつつ、対策もご紹介します。
メキシコ人の1年間の読書量はどのくらい?
また、全国学校図書館協議会が2017年11月に発表した調査では、小学4~6年生の1カ月の平均読書冊数は11.1冊(2017年5月の1カ月間)で、30年前の1987年の7.4冊から比較すると約1.5倍に。小中学生においては、読書離れどころか、むしろ子どもは読書をするようになっています。
メキシコはどうかというと、なんと年間の平均読書量は3.8冊(2015年)。日本よりはるかに少ない数字です。また、2018年の発表では1年に1冊以上本を読んだのは、国民の45%のみ。2015年は50%だったことから、読書離れがさらに進んでいることが警告されています。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf
http://www.j-sla.or.jp/material/research/63.html
http://www.eluniversal.com.mx/articulo/cultura/letras/2016/04/16/mexico-lee-38-libros-al-ano-indica-encuesta-de-inegi
※メキシコ国家統計地理情報局(INEGI)の調査(2018年)を伝える新聞記事。
http://www.eluniversal.com.mx/cultura/letras/en-mexico-hay-menos-lectores-inegi
本の値段と読書習慣の関係性は?
例えば、子どもの読み聞かせ用の20ページにも満たない薄い絵本は30ペソ程度(約173円)からありますが、デパートで売っている童話集ともなると、安くても200ペソ(約1,156円)をくだりません。2018年時点で最低賃金が88.36ペソ/日(日給約510円)ということを考えると、本を買うお金があるならば、食べ物を買わなくてはならない、そういう層が存在するのは事実です。
とはいえ、メキシコの公立学校には、毎年新年度に国から一定数の本の寄付も行われています。それは経済的に本の購入が困難な層にも読書の機会を与えることを目的としていますので、「高くて買えない」だけが読書を習慣づけられない理由、とはいえなさそうです。
(※日本円については、2018年9月11日時点のレート、1ペソ=約5.78円にて換算したもの)
速読>理解力重視の教育法
叔母いわく、メキシコの国語教育が内容の理解より、速読を重視してきた弊害があるそう。メキシコ人の読書傾向についての記事には「(読書量のアンケートに対して)読書をした、と答えた人のうち、1/4が内容の半分もしくはそれ以下しか理解できていなかった」というデータも掲載されていました。
内容を理解する力に乏しければ、楽しみもわからず、読書をする習慣がつかないのは当然でしょう。
親の読み聞かせが唯一の方法?
そんな筆者に叔母は、「1冊の本を一度に読み切ることが大事なのではない」と話します。例えば、読むのは1、2ページだけでも十分。その一部分の中で「この登場人物は寂しい顔してるわね。どうしてかしら?」などの質問をしたり、子どもが何を感じたかを尋ねることが必要だといいます。
文字を書ける年齢に達したら、本の中から好きな部分を書きだして「お気に入りのフレーズ集」を作るのも一案だそう。読書の魅力を知るためには、数をこなして文字を追うのではなく、言葉や文章に興味を持たせ、そこから理解と感情の発展をさせることが必要なのです。
その点においては、なにも「本」を読むだけに限らない、といいます。読書の習慣づけの言葉の楽しさを知るには、街に出て、外で見た看板や宣伝文句を使うという手もあり。それであれば、気負うことなくはじめられますね。
みんなで読めば楽しさ倍増!のイベントも活用
読書の習慣が浸透していないメキシコではありますが、意外にも(?)メキシコシティには、イギリスの新聞『ガーディアン』が主催する「世界で最も美しい本屋」のランキングで8位に選ばれた「El Pendulo」という本屋があり、また「空中図書館」などとも呼ばれ、SF的な独特な雰囲気が世界中から注目される「ヴァスコンセロス図書館」があります。こちらは建築家アルベルト・カラチデザインで、トリップアドバイザーで「死ぬまでに行ってみたい図書館 15」に選出されるなど、さまざまなメディアでもよく取り上げられています。
このような本屋や図書館はもちろん、その他子ども向けの図書施設などでは、週末や長期休暇中に子どもから青少年向けの「読書会」や「朗読会」が行われています。
過去に筆者がインタビューをした、舞踏家で紙芝居演者の横尾咲子さんもこのイベントの常連で、毎年メキシコの子どもたち向けに紙芝居の上演を行っています。
子どもの「共感力」を育む!紙芝居の世界と魅力
個人的な経験を踏まえて
今考えると、お手本通りの内容が期待される読書感想文システムがあり、また数をどれだけ読んだかが重要視されていた読書リストがあったために、だんだんと読書から遠ざかってしまったような気がしています。
その後、高等科時代の恩師に出会ったことで、言葉の面白さを知り、遅れを取り戻すかのように、母が持っていた本をむさぼるように読んだことを覚えています。
もちろん、子どもが読書に興味を持ちやすい環境を親が用意してあげることは大事です。が、それは数をこなすことで整うのではなく、言葉の持つおもしろさや奥深さをいかに伝えられるかにかかっているのだな、ということが個人的な経験や夫の叔母の言葉からもわかります。
メキシコに比べると日本では本も手に入りやすく、子どもが楽しめそうなイベントもたくさん開催されています。これを機に、親子で読書習慣を身につけてみませんか。