昔話と言えば、浦島太郎・金太郎・桃太郎の「三太郎」が定番です。しかし、民話として語り継がれている『太郎』はこれら三太郎だけではありません。教訓・道徳など学べることも多い、『太郎』の出てくる絵本を4作ご紹介します。
昔話の定番「三太郎」とは?
まずはそれぞれの物語を、簡単におさらいしてみます。
いじめられていた亀を助けたお礼に、竜宮城で楽しい時間を過ごす浦島太郎。その間に地上では何百年もときが流れ、戻った頃には両親・友人すべてを失っていました。
困った浦島が竜宮城からのお土産の玉手箱を開けると、もくもくと白い煙が。浦島は一瞬にして老人になってしまいました。
『金太郎』
足柄山で育った金太郎は、力持ちで親孝行な男の子です。森の動物たちと友達になり、いじめっ子の熊を相撲で負かして家来にします。成長した金太郎は、文武両道の立派な武士となりました。
のちの頼光四天王・坂田金時の幼少時のお話と言われています。
『桃太郎』
桃から生まれた桃太郎は、おじいさんとおばあさんに大切に育てられました。心身共にたくましく育った桃太郎は、おばあさんからもらったきび団子を持って、鬼ケ島へ鬼退治に出かけます。
きび団子で犬・猿・キジを家来にして、見事に鬼を成敗。人々に平和をもたらし英雄となります。
三太郎以外の『太郎』が出てくるお話
1.ちからたろう
著者 :今江祥智(文)、 田島征三(絵)
出版社 :ポプラ社
あるところに貧しく、お風呂に入ったことのないおじいさんとおばあさんが暮らしていました。はじめてお風呂に入ったふたりは、たくさん出た「垢(あか)=こんび」で子どもの人形を作ります。
この人形を子ども代わりにして、ご飯を与えてみるとなんと食べ始めたではありませんか。おじいさんとおばあさんは「こんびたろう」と名づけ、我が子として育てます。
成長したこんびたろうは、おじいさんの作った金棒を持って、修行の旅に出かけました。ものすごい力持ちとなった彼は「ちからたろう」と名を変え、家来を連れて化け物退治に向かいます。
垢から生まれたのに、とっても強い青年に成長してしまう。その奇想天外さが子どもの心を引き付けます。
躍動感ある豪快な絵柄が、主人公の怪力さをよく表現した絵本です。ちからたろうが歩くときの「のっしじゃんが、のっしじゃんが」といった独特の音は、読んでも聞いても楽しいです。擬音語・擬態語を親子で声をあげて読むと、読み聞かせタイムがより盛り上がるでしょう。
2.三ねんねたろう
著者 :大川悦生(文)、渡辺三郎(絵)
出版社 :ポプラ社
水不足で困窮している農村が舞台のお話です。働き者で親孝行のねたろうは、毎日農作業に精を出しますが、水不足のため稲はうまく育ちません。そんなある日、最愛の母親が亡くなり希望を失ったねたろうは、眠り続けるようになります。
3年3カ月たったある日、ねたろうは突然起き上がり遠い川から水路を引き始め……。
ねたろうはただの怠け者ではなく、努力の末に心が折れてしまった若者です。村の人々に馬鹿にされながらも眠り続けていた彼は、寝ているように見えて「村を救う方法」をじっと考えていたのでしょう。
「頑張っても上手く行かないときは、ゆっくり休む」「休むことで名案・気力・体力が生まれる」というゆとりは、パパママにも大切にして欲しい心構えです。
3.でっかいまめたろう
著者 :大川 悦生(作)、長谷川 知子(絵)
出版社 : ポプラ社
子どものいないおじいさんとおばあさんは、神様に「どうか子どもを授けてください。まめつぶくらいの子どもでもいいです」と毎日お祈りしました。お祈りをして3年目のある日、おばあさんの右手の親指のまめから小さな子どもが生まれました。
「まめたろう」と名付けられたその子は、ちっとも大きくなりません。しかし強く賢く、心優しい少年に成長します。15歳になったまめたろうは、ハチとクモとのねずみを従えて鬼退治に出かけました。
体は小さいまめたろうですが、勇気あふれる強い男の子。自分よりも何倍も大きなヒキガエル・オオカミにも立ち向かう、でっかい心意気の持ち主です。今にも絵本から飛び出してきそうな元気で愛らしい絵柄は、鬼さえもどこか愛嬌を感じてしまいます。
4.八郎太郎
著者 :菊池 敬一(文)、丸木 俊(絵)
出版社 :小峰書店
八郎潟と田沢湖にまつわる民話です。八郎太郎とたつこは、仲良く幸せに暮らしていました。ある日、喉が乾いた八郎太郎は、谷川の水を飲もうとして誤って岩魚を飲み込んでしまいます。苦しむ八郎太郎がふと気付くと、いつの間にか大蛇に変身していました。
人々から攻撃され追われ、住処を探してさまよう八郎太郎。残されたたつこは八郎太郎を懸命に探して回ります。
ぼかしのある輪郭の描き方、力強さを感じる色使いが、大蛇になった八郎太郎を迫力満点に表現した絵本です。人から忌み嫌われ迫害されながらも、八郎太郎は憎まず優しさを失いません。姿形が変わってもお互いを思い合う気持ちに、心が揺さぶられます。
人間味あふれる太郎たちを応援しよう
「自分だったらこうするのに」「どうしてこんなことをしたの?」など、登場人物に対する意見・批評も出てくるはず。子どもの新鮮な感想に、パパママの作品のとらえ方も変化するかもしれませんね。