桃太郎・金太郎・浦島太郎の「三太郎」は有名な昔話ですが、じつは現代にも個性豊かで魅力的な『太郎』たちがいます。未来の定番になるかもしれない、『太郎』が登場する現代の絵本に注目してみました。ユニークで愛らしい主人公たちの活躍に、きっとお子さまも夢中になることでしょう。
親近感がわく現代の『太郎』たち
一方、現代の太郎たちはユニークでどこかおちゃめ。くすりと笑いながらも応援したくなる、「自分と似ているかも」と感じてしまうほど身近なヒーローたちが登場します。「自分だったらどうするだろう」と、子どもの考える力を育てるストーリー展開がその魅力です。
共感させ想像力を育てる、現代の『太郎』物語を見てみましょう。
1.ゴムあたまポンたろう
著者 :長 新太(作)
出版社 :童心社
遠くのほうから飛んできた「ゴムあたまポンたろう」は、名前のとおり頭がゴムでできている男の子。ポンと山にぶつかると、ボールのように飛んで行ってしまいました。
鬼・バラ・おばけ・ハリネズミ……ポンたろうのたどり着く先はいつも危険な場所です。しかし頭がゴムのポンたろうは、「ポン」と飛んでピンチを切り抜けます。ときには失敗もあるけれど、ゴム頭で飛びながらいろいろな場所を旅していくストーリーです。
日本絵本賞にも選ばれたロングセラー作品。ナンセンスなストーリー展開と奇抜な色使い、豪快な絵柄が子どもの好奇心と想像力を刺激するでしょう。自由にゴムボールのように飛び回るポンたろうは、元気に遊ぶ子どもの姿と重なります。
2.おしっこちょっぴりもれたろう
著者 :ヨシタケ シンスケ(作・絵)
出版社 : PHP研究所
主人公のもれたろうは、おしっこをする前後にちょっぴりもらしてしまう男の子。ちょっぴりだからすぐに乾くし、ズボンを履いちゃえばわからないと思っていますが、お母さんにはいつもしかられます。
ある日いつものように、ちょっぴりもらしてしまったもれたろう。乾くまでの間、自分と同じように「ちょっぴりもれたろう」な人を探しに出かけます。「もれたろう」な人はなかなかいませんが、みんなそれぞれ悩みを抱えていました。そしてついにもれたろうは、「おしっこけっこうもれたろう」君に出会い……。
またパンツを汚してしまった、というもれたろうの落胆に共感するお子さまは多いでしょう。「ちょっぴりなんだからいいじゃないか」と前向きな考え方に、励まされる子どももいるかもしれませんね。
パンツが乾くまで、同じ悩みの人を探して歩きまわる場面では「外からは分からなくても、人には誰しも悩みがある」ことをわかりやすく伝えています。ラストの展開には、親子で笑ってしまうはずです。
3.ねぎぼうずのあさたろう
著者 :飯野 和好(作)
出版社 :福音館書店
主人公のあさたろうは畑に植えてある葱坊主。ヤツガシラのごんべえたちが椎の実のおようちゃんにいじわるをしているのを見て、あさたろうは畑を飛び出します。正義感が強いあさたろうは、ねぎじるを飛ばしておようちゃんを助けることに成功。
ヤツガシラのごんべえの手下に狙われて、あさたろうはまわしがっぱ・三度笠で旅に出ます。
まるで時代劇のようなストーリー展開と、浪曲調の文体・渋い絵柄が新鮮です。大衆娯楽時代劇のようでありながら、登場人物はすべて野菜。
「な、なにをするんでいっ」「むふふふふ ねぎぼうずのあさたろうだな。わしはきゅうりのきゅうべえだ」。テンポのいい語り口調は読み手も聞き手も楽しめるので、読み聞かせにもおすすめです。
4.チョコたろう
著者 :森 絵都(ぶん)、青山 友美(え)
出版社 : 童心社
チョコから生まれたチョコたろうは、苦いものや辛いものに世界が負けないよう、特製のミルクチョコを配る旅に出ました。「ちょこっとチョコはいかがですか」、この一言と甘いチョコで、チョコ太郎は人々を笑顔にしていきます。
ケンカをしている大人も、泣いている女の子も、チョコ太郎のおかげでみんなにっこり。ところが、ある日現れた「甘いもの大好きな盗賊団」のせいで騒動が巻き起こります。
武士のような格好をしたチョコ太郎ですが、刀などの武器は持っていません。その代わりに、甘いチョコを配ることでトラブルを解決してしまう、なんとも平和的なヒーローです。
相手を倒して正義を通すヒーローはなく、心を和ませて平和をもたらす新しい形のヒーローと言えます。かわいくて優しいチョコ太郎を親子で応援しましょう。
5.こぶとりたろう
著者 :たかどの ほうこ(作)、杉浦 範茂(絵)
出版社 :童心社
たろうがテストで悪い点数をとった日、お母さんは「悪い点をとるのは頭が固いせい」だと言います。そして「やわらかくなあれ、やわらかくなあれ、ちちんぷいぷいのぐりっ」と呪文を唱えながら、たろうの頭をなでました。
すると国語・算数・理科・社会、なにをやってもすいすい頭に入っていくではありませんか。しかし、たくさん知識をつめこんだせいで、頭にこぶが4つも出きてしまいます。困ったたろうに、妹のちょん子が解決法を提案しました。そのアイディアは、「こぶとりじいさん」のように鬼にこぶをとってもらおうというもの。果たしてうまくいくのでしょうか。
たろうを頭ごなしに叱るのではなく、「頭が固いせい」とおまじないをかけてくれるお母さんが素敵です。能力を否定せずに優しく後押することで、たろうも素直に頑張れたのでしょう。
こぶができて慌てるたろうと、助けようとするちょん子の兄妹愛も微笑ましいですね。
子どもの性格に近い『太郎』を探そう
自分と似ている太郎が主人公であれば、共感しやすく集中力も持続します。絵本の世界に入り込めるような1冊を見つけてあげてください。