慶應幼稚舎受験の際は必読とされている「福翁自伝」。これは福沢諭吉が書いた自伝です。100年以上も前に書かれた本ですが、この本にはこれからのお子さまの教育に重要なポイントが、いくつも隠されています。その中から4つのポイントをご紹介しましょう。
福沢諭吉とは?
著者 :福沢諭吉( 著) 、富田正文(校訂)
出版社 : 岩波書店
しかし、実際にどのようなことをしたのかと聞かれると、明確に答えられる方はそれほど多くありません。福沢諭吉は、江戸時代の終わりから明治時代にかけて、激動の時代を生き抜いた偉人の一人です。
学問と出会った諭吉は、どんどん新しい知識を吸収し、海外にも目を向けるようになりました。そしてイギリスやアメリカの自由で開放的な空気に衝撃を受けます。
そこで諭吉は「このままでは日本はだめだ」と感じ、日本の新しい時代を作るためには人々の教育が必要だとして、『学問のすすめ』などの書物を執筆したり「慶應義塾」を立ち上げたりしたのです。福沢諭吉は、「人はみな平等で、自由に話ができる」現在の日本の基礎を作った一人といえるでしょう。
ポイント1【グローバルな視野と柔軟性】
もちろん国外の情報もほとんど入ってこなかったはずです。そんなときでも諭吉は、価値観や固定観念に縛られないよう努めました。グローバルな視野を持ち、自由で柔軟な発想を持っていたからこそ、開国後の日本の文明化にも大きく貢献できたのでしょう。
福沢諭吉の柔軟性を示す逸話を、ひとつご紹介します。諭吉は長い間、オランダ語(蘭学)を学んでいました。しかしある日「時代は英語だ」という噂を聞きつけると、パッとオランダ語に見切りをつけ、英語の勉強を独学で始めたのです。この逸話だけでも、どれだけ福沢諭吉が柔軟で、グローバルな視野を持っていたのかがわかるでしょう。
これからの時代、より一層グローバルな視野が必要となり、それにともなって柔軟な考え方も求められます。福沢諭吉のものの考え方は、今後のお子さまの教育に活かせるのではないでしょうか。
ポイント2【「すべての人は平等」という考え方】
こういった思いから書いたのが『学問のすすめ』です。有名な一節「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という言葉には、福沢諭吉の平等を願う気持ちが込められているのでしょう。
この一節のあとに諭吉はこう続けています。「人は生まれながらにして貴賤貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」。
つまり人間はもともと平等だけれど、懸命に学ぶ人は地位や富を得て、学ばない人は貧しくなるだろう、ということです。そんな格差を作らないためにも、「学問」が必要だと説いています。社会の多様化にともない、相手を対等に見る感覚は今後より重要になります。それぞれの違いや個性を認め合うためにも、根底になる学びが必要となるでしょう。
ポイント3【勉強だけじゃなく遊びも大切】
世の中には、勉強だけでは学べないものもたくさんあります。福沢諭吉の柔軟な考え方や行動力なども、ただ机に向かっていたら身につかなかったものかもしれません。子どもの内面を育てるには、学問と遊びのバランスをとりつつ、さまざまな経験を積ませてあげてください。
ポイント4【流されずやり抜く気持ち】
しかしそんな周囲の言葉など意に介さず、彼は思ったままに行動しました。その結果、長きにわたり語り継がれる偉人となったのです。
世界のグローバル化やAIの登場など、現在の日本や世界は大きな転換期にあるといえます。そういった世の中を生き抜くためには、柔軟性とともに流されない心も大切になってくるのではないでしょうか。
子育てへの考え方や価値観が変わるかも
『福翁自伝』はさまざまな出版社から出されており、なかには現代風に読みやすくしているものもあります。「気になるけど読む時間がない」という方は、漫画の伝記もいくつか出ているため、そちらを読んでみるのも良いでしょう。子育てや教育への考え方や、自分の価値観が変わるきっかけになるかもしれません。