イギリス教育におけるハウスシステムやハウスカラーをご存知ですか?魔法学校が登場する有名な映画や小説の寮生活で、なんとなく知っているという方も多いかもしれませんね。今回は、イギリスの公立の学校にも取り入れられているハウスシステムの仕組みや内容をご紹介します。
HOUSEってなんのこと?
「ハウス」または「The house system(ハウスシステム)」「ハウスカラー」という言葉を聞いたことがありますか?
一般にハウスといえば家のことですが、イギリスの学校教育における「ハウス」は、学年性別全てを混合にして分けた、いわば学校内の縦割りグループのことです。
小説や映画の『ハリー・ポッター』シリーズで、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンという寮(ハウス)の名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。物語の中で生徒たちは、それぞれのハウスごとに寮生活をし、お揃いの色のガウンやネクタイを制服として着用していますね。
このハウスシステムは、もともとイギリスのボーディングスクール(寄宿学校)ではじまりました。映画の中のハリーたちのように、生徒たちはHouse(ハウス・家)と呼ばれるそれぞれの寄宿舎で生活をしていたことから、現代のハウスシステムは派生しました。
現代では、寄宿学校ではなく普通の公立学校でも、学校生活の中でハウスシステムやハウスカラーを取り入れているところもあります。
今回は、筆者の子どもたちが通うイギリスの公立小学校の例を挙げてご紹介します。
きょうだいは同じハウス!一度決まると入学から卒業まで変わらない
小学校の入学前になると、制服と一緒に体操服を買わなければなりません。入学前に学校からもらう資料の中に、自分がどのハウス(ハウスカラー)になるのかの通知書が入っています。体操服を買うときは、学校のロゴ入りのハウスカラーのTシャツを制服専門店に買いに行きます。
娘たちの学校では、Siblings(兄弟姉妹)は同じハウスカラーと決まっています。また、ハウスカラーは一度決まると入学から卒業まで一度も変わることがありません。
仲良しのお友だちが違うハウスだと少し寂しく感じることもあるようですが、同じハウスになったメンバーと一致団結して頑張ることを学べるのは良いことだと思います。
学校生活での良いことも悪いことも影響する!?
ハウスカラーは、娘たちの学校では赤(ルビー)・青(サファイア)・黄色(アンバー)・緑(エメラルド)の4色に分けられています。
運動会の競技で上位になった等の得点は個人につかず、ハウスポイントとして所属するハウスに加算されたり、他の学校生活(学業やボランティア、善い行いや問題行動)などでもポイントをもらえたり、減らされたりしますので、ハウスポイントへの責任を生徒一人一人が担っていると考えると、気を引き締めた生活態度が求められます。
このあたりも、ハリー・ポッターのお話の中に登場する寮のシステムとよく似ていますね。
ポイントが高かったハウスを祝おう!
娘たちの学校では、学期ごとにハウスポイントを合計して、一番得点が高かったハウスを発表し、お祝いします。
お祝いといっても小学校なので、特に盛大なことをするのではありませんが、学期末の指定された1日に、勝利したハウスの子どもたちだけ、そのハウスカラーが入った服を来て私服登校することができます。
一目でわかるので、登校時などには、生徒や保護者から「おめでとう!」と声をかけてもらえる嬉しい日です。娘たちの学校では近年は青(サファイア)が強く、連続で青い私服の子どもたちを見る機会が多くありましたよ。
伝統から派生したシステムで学校生活を充実させる
イギリスのハウスシステムを当たり前だと思っていた筆者の子どもたちは、日本の運動会を見て「なんで赤と白しかないの?」と驚いていたのですが、それくらいハウスシステムは学校生活に溶け込んでいるようです。
イギリスは個人主義の国といわれることも多いのですが、こういったハウスシステムをみているとグループで責任と目標をもって、共に頑張る姿勢を育てていることにも気づかされます。
運動会ともなると、4色の体操服が運動場を駆け回るので、とてもカラフルで楽しいハウスシステムとハウスカラーの制度は、子どもたちの学校生活のモチベーションをあげることにも一役買っているといえますね。
在英13年目の2時の母、ライター兼イラストレーター。武蔵野美大卒。現在は英国で日本語教育・日本語子ども会活動にも従事。海外生活・育児経験を活かした記事を執筆中。