子どもを“respect”するとは?海外の教育を通して学んだこと

「リスペクト(respect)」という言葉は、日本でも次第に認知度が高まっていますが、本来はどんな意味があるのでしょうか?筆者がオーストラリア生活の中で、特に学校教育を通して知った、相手を“respect”するとはどういうことか?を紹介します。

「リスペクト(respect)」とはどういう意味?

カタカナの日本語として、私達の日常生活に浸透している英単語はたくさんあります。今回取り上げる「リスペクト」という言葉の元は英語の“respect”という単語から来ています。英和辞書を引くと、「尊敬する・敬う」「尊重する・重んずる」と訳されています。

そのため、日本語の中で「リスペクトする」といった場合、「(その人や、その人の作品が人並み外れて優れているため)尊敬している」といった意味合いで使う人が多いと思います。

「尊敬する」というとき、多くの人は「自分や一般の人にはない優れた点を持っている人」を称える意味で使うでしょう。

しかし、本来の“respect”とは、「尊敬する」とは少し違った意味合いがあります。この言葉の意味を知るためには、日本の文化とは異なる「人間関係に対する考え方」を知る必要があります。

英語の“respect”とは、何を表しているのでしょうか?

英語圏の「個人に対する考え方」

英語の“respect”が持つ根本的な意味は、「相手・対象物が持つ価値を認め、それを大切にし、注意を払う」ということです。

この背景には、対人関係において「人は誰もが、自分のことは自分で決められる、その人だけに属する『個人の領域』を持っている」というとらえ方があります。

どんな人でも、その人自身の考え方、価値観、信条、好み、習慣やライフスタイル、宗教などを持っており、それはその人自身が決めることです。他人と比べて「どちらが優れている」「どちらがより好ましい」というものではないし、「(劣っている人だから、くだらない人だから)その領域を壊されてよい」人がいるわけでもありません。

その「相手の領域」を認め、大切にすることが、相手を“respect”することです。

“respect”は教育の場でのキーワード

筆者の住むオーストラリアの学校教育では、“respect”はとても大切な価値観として扱われ、人間関係を学ぶ上でのキーワードとして登場します。
多くの学校では子どもたちに、

“Respect other students.”
“Respect teachers.”
“Respect your school.”

……などと教えます。また、学校や先生も、

“We respect our students.”

といいます。

学校という場を通じて、子どもたちは、自分を取り巻く人々や環境を大切にすること、また自分と違う意見や習慣を持つ相手との接し方を学びます。学校や先生は、生徒一人一人を個人として大切にすることを、教育の中で重視しています。

日本語では、「先生が生徒を尊敬する」、とはいいません。本来の“respect”は、「尊敬」とは少し異なり、相手が自分より優れているかどうかに関わらず、「その人の存在を価値あるものとして重視する」という意味です。

子どもを“respect”するとはどういうこと?

その点では、日本語の「尊重する」という言葉が、respectに近いといえるかもしれません。しかし、「尊重する」とはどういうことでしょうか?はっきりと答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか。また、「子どもを尊重する」といった場合、「子どもの好きにさせること」のように解釈されることも多いです。

「子どもを“respect”する」ことは、子どもの好き放題にさせることではありません。

「子ども自身がそのような意見や感情を持っていることを認める」行為です。子どもの意見を軽くあしらったり、否定せず、大切なものとして受け止める姿勢を示すことです。その上で、「こちらも違う考えを持っていること」「違う考えを持つ人もいること」もまた、“respect”されなければなりません。大人は、子どもの安全や健康を守る責任があり、それを果たす役割を負っています。子どもは、その価値を理解し、大人の意見を重視する、ということも学ぶ必要があります。

このように、“respect”はどちらかだけが尊重されることではありません。誰もが自由と尊厳を持った個人として認め合いながら、関わり合っていく……そのために必要なのが、“respect”なのです。

最後に

筆者はずっと日本で生まれ育ちましたが、オーストラリアの教育を通じて“respect”という考え方を知り、人間関係のとらえ方が変わりました。

日本の社会では、「自分がどう考えているか」よりも、「普通みんなはどう考えるのか」「自分は他人と同じ考えか」といったことが、より重視されていると感じます。集団にとって必要なのは、「同じ感性を共有すること」で、人との違いは「和を乱す」と思われがちです。

しかしこちらの社会では、人と同じかどうかに関わらず、また上下関係に関わらず、「個人の持つ領域」は誰もが守られるべきだ、ととらえられています。「その人がどう考えるか」が、とても重視されています。それが“respect”という考え方につながります。

それぞれ異なる「個」を大切にし合いながら、共存できるポイントを探って行く……。Respectの姿勢は、日本においても、よりよい親子関係や周囲との人間関係を築くために、役立つのではないでしょうか。